高齢化最前線の過疎地域で奮闘する理学療法士

高齢化最前線の過疎地域で奮闘する理学療法士

INTERVIEW―高齢化最前線の過疎地域で奮闘する理学療法士―

 

医療法人社団 増原会 東城病院

河野 立希地 先生

田原 岳治 先生

我が国の高齢化率(65歳以上の高齢者が総人口に占める割合)は約3割まで増加しています。超高齢化と人口減少が加速するにつれ、我々理学療法士を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。広島県も市内に医療資源が集中しており医師の地域偏在や診療科偏在が課題とされています。医療資源のひとつである理学療法士も地域偏在が顕著ですが、普段の業務の中で意識する方は少ないでしょう。過疎地域で「今」起こっていることは長期的視野で都市部の医療を考えたときに決して他人事ではありません。 そのような背景も踏まえ、今回の企画では、高齢化率がすでに4割を超えている地域で、地域住民の生活を支えるため日々活躍されている理学療法士にお話を伺ってきました。

高齢化率47%。医療資源は圧倒的に不足しており都市部とは状況がかけ離れています。 田原:庄原市は広島県の北東部に位置し、面積は広島県の約14%を占めます(図1)。これは、800近くある全国の市数で13番目であり、関西以西では最大の面積です。 私が所属する東城病院のある東城町は、庄原市の中でも最東であり岡山県との県境に位置します。庄原市の高齢化率は42.8%で、東城町の高齢化率は46.8%です(令和2年1月現在)。

河野:広島市内の病院で勤務される方にとって大小さまざまな病院が身近にあるのは当たり前だと思いますが、この地域では病院は限られ、医療資源は圧倒的に不足しており都市部とは状況がかけ離れています。医療資源だけでなく、すべての人的資源が不足しています。病院周囲にいくつかお店がありますが、どの店でも常に求人している状況です。そのような極めて特殊と呼べる環境ですが、医療そして介護において少しでも良い理学療法を提供していけるよう頑張っています。

車で片道2時間。それでも必要とされれば足を運ぶようにしています。

田原:東城病院のリハビリテーション科では、入院患者さん、外来患者さんへのリハビリテーションに加えて、図1のような広い範囲で通所リハビリテーション・訪問リハビリテーションを行っています。 岡山県最西の新見市西部の中には、新見市中心部まで20km以上あり通所サービスが必要であっても行き場がなく困っておられる方がいます。そのような場合、当院から県境をまたいで通所リハビリテーションのお迎えに行かせていただくこともあります。

河野:さらに、当院は備北地区で6施設ある地域リハビリテーションサポートセンターの一つとして、高齢者の通いの場での活動も行っています。庄原市で勤務する理学療法士の数は限られていますので、とても広い範囲で活動させていただいてます。先日も高野町で行われる通いの場からお声かけいただきました。病院の理解があって実現できていることではありますが、地域で必要とされれば車で片道2時間かけてでも足を運ぶようにしています。私たちが参加させていただく通いの場のある場所は山深い集落も多く、そうした集落で開催される高齢者の集いの場には、交通弱者の方が参加されます。

 

理学療法士が不足して困っている地域で働くのが夢でした。

河野:私は養成校を卒業して最初の就職先が今の勤務先です。廿日市市出身の私にとって、遠く離れかつ市内とはまったく環境が異なる地での生活には不安がありましたが、「せっかく理学療法士になるのだから、理学療法士がいなくて困っている地域で活躍してみたい」という思いが勝り、就職を決意しました。

田原:河野さんは通いの場での講演の中で、自身の生い立ちから現在に至るまでを話します。運動に関する内容もさることながら、都会から来た若者が山間僻地の集落で親身にする体験型講演が、参加者の方には貴重な体験となるのだと思います。

“TOJO is Front-Line”日々、高齢化と最前線で戦っています。

田原:高齢化率の上昇が叫ばれますが、東城町のような地域ではとっくに超々高齢化に直面しています。街中であれば介護保険サービスを提供する事業所が整っているでしょうが、過疎地域では事業所も少なく危機的状況です。例えば、介護支援専門員と相談し、担当している入院患者さんの退院後の介護保険サービスとして訪問介護とショートステイを導入しようと思っても全然空きがない状況です。十分に介護保険サービスを組めることは少ないです。それでもできるだけ質の高い在宅生活を支援するため理学療法士として日々試行錯誤の毎日です。

田原:私の娘が手作りしてくれたハンコを片手に、日々、高齢化と最前線で戦っているつもりです。過疎地域で働くのは不便なことばかりですが、たくさんのことを勉強できる環境だと感じています。新たな取り組みとして、3年前から青年海外協力隊で数年間海外に派遣されるのと同じようなイメージで、新人理学療法士向けに5年間の卒後教育プログラムを開始しました。都会から出て実際に東城町で生活しながら当院で勤務してもらいます。5年後は当院を卒業 (退職)という形で送りだし、当院での勤務経験を最大限活かして新天地で活躍して欲しいと願っています。我が国で超高齢化をはるかに超えた社会が本格的に到来する時に備え、そのような状況に対応できる人材を育てることも私たちの大事な役割だと思い、人材育成を含め日々奮闘しています。

(この記事はHPTA NEWS One Step261に掲載されました)

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