INTERVIEWープロ野球球団で活躍する理学療法士ー

INTERVIEWープロ野球球団で活躍する理学療法士ー

INTERVIEW―プロ野球球団で活躍する理学療法―

広島東洋カープ トレーナー部トレーナー担当

理学療法士

小川 靖之 先生

プロ野球球団で勤務するチャンスはなかなかないと思いますが、昔からプロスポーツに興味があったのですか?

私は自身が高校まで野球をやっていたこともあり、高校生の頃からプロ野球に関わりたいという漠然とした夢を持っていました。進路指導の際に、当時の担任の先生から、理学療法士の道を勧められ、出身地である東北地方の養成校へ進学し、卒業後はスポーツに特化した病院である千葉県の医療法人社団紺整会 船橋整形外科病院に入職しました。船橋整形外科病院では、通常診療に加えて病院近くの高校野球チームの帯同等の経験をさせてもらいました。6年間勤務した頃、当時の部長から「広島東洋カープで理学療法士を探しているそうだが、お前どうだ?」と声をかけていただきました。出身地からはるか遠い広島の地ということに加え、「今の自分が行って役にたてるのか?」という思いもあり悩みましたが、高校時代からの夢であったこともあり広島の地に行くことを決断しました。早いもので、今年でカープに入って6年が経ちますよ。

 

球団では主にどのような仕事をされているのですか?

私が所属するトレーナー部はメディカル部門とコンディショニング部門に大別され、私はメディカル部門で仕事をさせてもらっています。主な仕事内容としては、(1)テーピング等を中心とした練習前のケア、(2)怪我により登録抹消された選手の治療、(3)練習後のケア、(4)コーチや選手への身体の動きに関するアドバイスですかね。(4)のアドバイスについては、特にコーチから頻繁に求められます。他には、選手が病院受診に行く際に帯同することもあります。

カープのトレーナー部には、職種毎にみると理学療法士以外に鍼灸師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、アスレティックトレーナーの総勢14名が所属しており、各職種が自身の専門性を活かして仕事をしています。私がここで働かせてもらうようになる前は、カープには理学療法士がいなかったため、病院勤務を辞めて球団に移ってきた当初は選手の求めることと理学療法士として提案したいことが一致しないこともありました。徐々に理学療法士のできることや強みを知ってもらえ、今では選手が怪我をしたり身体の不調を感じたりした際、誰に治療してもらうかの選択にある程度自由度がある中で、理学療法士を頼ってくれる機会もあるため嬉しいですよ。

 

理学療法士として選手の治療を行う上でどのようなことを意識していますか?

私は理学療法士の強みは医学的知識に基づく「評価能力」だと思っています。選手が不調を感じた時に単純にマッサージを求められることもありますが、まずは選手がどのような症状の改善を求めているかを確認し、理学療法評価を行います。そして、評価内容から考える治療の内容やその必要性について可能な限り分かりやすい言葉で選手に伝えるようにしています。対症療法に留まらず怪我や不調の原因を考え、それを改善できるような治療を選手に提案することを普段から強く意識しています。そのようなことを続けていたこともあってか、自身の身体に興味を持つ選手が増えたように感じています。今では、提案したエクササイズの理由を選手の方から積極的に求めてくることもあります。中には、解剖の話をした翌日に、「解剖の本を買って自分でも勉強しています」と教えてくれる選手も出てきましたよ。プロ野球球団で働く中で、当然ながら競技特性を高いレベルで理解しておく必要はありますが、それさえ理解していれば、病院で行われる理学療法を十分に活用できる分野だと思います。

 

病院で働かれていた頃とは違ったやりがいがありますよね

言うまでもないことですが、選手は野球生命が関わっているため、彼らの治療に関わるのはものすごく大きなプレッシャーを感じます。特に入職して間もない時期は、プレッシャーで夜何度も何度も目が覚めることもありましたよ。しかし、そのプレッシャーの中、一緒にリハビリに取り組んだ選手が活躍するのを見たときは嬉しいです。怪我をした選手がまた普通に野球ができるようになるだけでも嬉しいのに、さらに大きな舞台で活躍するのを見たときはこの上ない喜びを感じますね。

カープには私が来るまで理学療法という言葉が飛び交うことはなかったと思いますが、私が来たことで少なくとも理学療法士の役割を知ってもらえたと思います。このようにプロ野球球団という新しい分野で理学療法士の職域を開拓できたことも、この職場で働く中で感じたやりがいの一つです。

 

プロスポーツに関わりたい理学療法士や理学療法を学ぶ学生も多いと思います

私もそうでしたがスポーツをきっかけに理学療法士を目指す人は多いですね。私は現在選手の試合に帯同することがほとんどないため、他球団との関わりは少なく、他の球団にどのくらいの割合で理学療法士がいるかについて詳細を把握できていませんが、理学療法士が所属している球団の割合は昔よりは増えてきていると思います。日本のプロ野球球団に所属するトレーナーについては、日本プロ野球トレーナー協会のホームページに公開されているので参考になるかもしれません。

私は、高校生の頃からプロ野球に携わることが夢だったとお話ししましたが、病院で仕事をしているうちにその夢を忘れかけていた自分がいました。しかし、縁あって今の仕事をできるようになったのは本当に有難いことだと思っています。私から皆さんにお話しできるメッセージとしては、もし、職業人として自身の将来に対し何らかの夢や目標を持っているのであればどのような目標であれ、少しでもその分野と関わりのある組織に身を置いておくことが達成に向けての第一歩だと思います。私はカープに来て言葉ではお伝えできない多くのことを学ばせていただきました。引き続き、研鑽を続けてチームに貢献するとともに、この経験を一般の臨床現場、特にスポーツ領域の臨床現場に活かせるよう活動していきたいです。

(この記事はHPTA NEWS One Step260に掲載されました)

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