INTERVIEWーより良い臨床実習の実現を目指して:認定理学療法士(臨床教育)の立場からー

INTERVIEWーより良い臨床実習の実現を目指して:認定理学療法士(臨床教育)の立場からー

より良い臨床実習の実現を目指して

広島医療生活協同組合
広島共立病院 リハビリテーション科
新居 拓也 先生 (広島北支部長)
認定理学療法士 (臨床教育)、認定理学療法士 (呼吸)
認定理学療法士 (徒手理学療法)

理学療法士作業療法士養成施設指定規則の一部改正により、理学療法士養成校学生の臨床実習指導が大きく変わろうとしています。すでに広島県内でも臨床実習指導者講習会の開催が始まっており、指定規則改正後の臨床実習に不安を持つ指導者もいるのではないでしょうか。この度、広島県内で唯一 (2019 年6 月時点)、臨床教育に関する認定理学療法士を取得されている新居拓也先生に、臨床実習がより良いものとなるよう普段心掛けておられることについてお聞きしました。

 

どうして認定理学療法士(臨床教育)の取得を目指されたのですか

私は、養成校卒業後、広島共立病院に入職し今年で11年目になります。卒後3年目まではケースバイザーとして養成施設学生の臨床実習指導に携わる機会があり、4年目以降は毎年2 〜 3人の学生のスーパーバイザーを務めていました。臨床実習は学生の将来にとって非常に重要な位置づけとなるものです。と同時に、1人のセラピストを社会に送り出すことに関わります。この大切な時期に関わる機会が増える中で、責任をもって臨床実習を行わなければならないと考え、認定理学療法士の「臨床教育」を目指し、2017年に無事取得することができました。取得課程では、様々な教育理論を始めとする基礎知識や診療参加型臨床実習 (クリニカル・クラークシップ)での実習指導等、多くのことを学ぶ必要がありました。昨今の指定規則改正もあり、臨床教育と聞くとつい卒前教育課程である臨床実習を想像しますが、実際には認定理学療法士(臨床教育)が学ぶ領域は、卒前教育に加えて、新人教育さらには患者教育も含まれます。

 

理学療法士養成課程における臨床実習の現状について教えてください

改正された指定規則の規定にも「診療参加型臨床実習が望ましい」と明記してあり、今後はさらにクリニカル・クラークシップが理学療法士養成課程に普及すると思います。この普及の程度については、都道府県での温度差も非常に大きいように感じます。ある県では、士会が旗振り役となり、県全体で統一し、クリニカル・クラークシップへの方針転換を一気に行いました。実際には、会員数や養成校数等、その地域特性が大いに影響することだと思いますので、すべての県士会で一斉に舵をきるのは難しいことも理解しています。また、長い間伝統のように続けられてきた「症例レポート」を中心とした臨床実習指導を受けてきた指導者が大多数を占めていることも影響し、現在の臨床実習指導でも症例レポートを活用するケースが散見されるように思います。
クリニカル・クラークシップの導入によって症例レポートを課さないことに対し、「一症例に継続的に関われない」といった理由でネガティブな意見を持つ方もいるかもしれません。私自身は、クリニカル・クラークシップの中で、実習指導者が担当する症例に長期的に関わることで長期的な視点を育むことは十分に可能だと考えています。むしろ、指導者がきちんと関われば学生の経験値は圧倒的に増えるでしょう。もちろん、症例レポートの作成自体は学問的に大切であるため、養成校で作成する必要はあると思います。しかし、臨床実習では、学生が自分の考えをアウトプットする場面作りさえできていれば、アウトプットの手段が必ずしも症例レポートでなくても良いのではないかと思います。

新居先生が臨床実習指導を行う際に配慮していることはありますか

 

私自身、実習指導者経験が浅い頃は「あれもこれも教えないといけない」という責任感から業務外の時間であっても何とか多くのことを伝えようとしていたように思います。しかし、たくさんの実習生に関わったり、臨床実習指導の学習を進めたりする中で、学生に対して一度にたくさんに伝えてもほとんど吸収されないことに気づきました。私の場合は、この簡単なことに気づくのに多少時間を要したように思います。その後は、学生の考えをより引き出すことを意識し、短期目標・長期目標を明確にして学生に関わるようにしています。臨床実習の中で私が学生に最も伝えたいことは、理学療法士としてのプロフェッショナリズムです。プロフェッショナリズムという言葉は少し曖昧で、セラピストそれぞれによって違いはあると思います。しかし、プロフェッショナリズムは患者に対する責任が基礎にあり、それを学生に伝えるには口頭だけでは不十分で、体験を通して学生自身に気づかせ感じさせる必要があることは共通していると思います。臨床での環境としては患者対応場面が大きく、『指導者である理学療法士の患者さんへの接し方』は当然として『学生の患者さんへの接させ方』に配慮しています。また、理学療法士によって思考過程が異なるケースも少なくないかと思いますが、その際は理学療法士同士のディスカッション場面にも立ち会ってもらうこと自体が学生にはとても良い経験になるのではないでしょうか。

 

認定理学療法士 (臨床教育)は、取得数・認知度ともにまだまだ不足している状況かと思います。そのような状況の中、今後どのような活動を行っていきたいですか。

 

認定理学療法士 (臨床教育)の取得者は全国でも133 名 (2019 年7月時点)であり、領域自体を知らない方も多いかと思います。しかし、理学療法士の免許取得後、どの領域に進むにしても必ず卒前の臨床実習は経験することであり、この部分の質をきっちり高めることは業界全体の底上げに繋がると考えています。私自身、臨床実習についてきちんと勉強する前は、養成校卒業後に就職されたばかりの新人に対する指導と同じような指導を臨床実習で行っていたことを反省していますし、業界としても臨床実習の方向性については主体性を持って具体的に議論していくことが必要だと思います。認定理学療法士 (臨床教育)を取得して良かったこととして、上司や同僚と臨床実習に関して話をする機会が圧倒的に増えたことだと感じています。ただの一資格ではありますが、臨床実習指導に悩んでいる同僚がその悩みを積極的に共有してくれるようになりました。今では私の職場では、臨床実習指導に関してディスカッションする場面がしばしば見受けられます。
このように、一つの資格を通して職場内で臨床実習指導に関してディスカッションする土台ができたこと、これはものすごく大きな変化だと思います。幸い支部で臨床実習指導に関する講習会を開催する際は講師としてお話させていただく機会もいただけるようになりました。今はクリニカル・クラークシップへの移行期間であるため、クリニカル・クラークシップの概要や進め方について私が情報提供することが多いのですが、本来は個別性の高い領域であるため多くの方々とディスカッションができる場を作り、より質の高い臨床実習が提供できる環境を整えることに関われたらと思います。そのような活動を通して、広島県全体の臨床実習指導がより良いものとなるよう微力ながら貢献できれば有難いです。

(この記事はHPTA NEWS One Step259 に掲載されました)

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