【対談】精神・心理領域で勤務する理学療法士の現状と今後の展望

【対談】精神・心理領域で勤務する理学療法士の現状と今後の展望

精神・心理領域で勤務する理学療法士の現状と今後の展望

甲田:本日はよろしくお願いします。早速ですが、今働かれている職場の概要を教えていただけますか。

 

北風:当院は精神科病棟を母体としており、医療保険では精神一般病棟と精神療養病棟、内科療養病棟、介護保険では内科介護療養病棟と老人性認知症疾患療養病棟、介護老人保健施設を有しています。精神一般病棟は、精神疾患を有しながら内科疾患等の身体的な疾患を有した方が入院される病棟となります。精神療養病棟は、精神疾患の急性期治療やその後の長期的な治療・療養が必要な患者さんが入院されます。また、認知症治療病棟も有しており、当院の現状として精神・心理領域における理学療法士の活動の中心は認知症治療病棟となります。

 

甲田:今でこそ理学療法士の世界で『精神科』という言葉を聞くことが増えてきましたし、日本理学療法士学会の部門のひとつとしても「精神・心理領域理学療法部門」が設立されています。北風先生が今の職場に就職された10年前は、精神科に就職される理学療法士は少なかったと思いますが、精神科を母体とした病院を選択された理由はありますか。

 

北風:就職した頃を思い返すと、今の職場を選択した理由に『精神科』というキーワードは少なかったように思います。むしろ、広島県西部で生活期を中心に地域に根差した病院に就職したいという気持ちで選択しました。

 

甲田:それは意外ですね。地域で高齢者を支援したいという理由で病院を選択され、入職してから精神科に直面したときは理学療法士としてどのような印象を持ちましたか。

 

北風:入職して3年間は通所リハビリテーションを担当しており病院業務に関わることはほとんどありませんでした。その後、法人内の異動で病院勤務となりましたが、精神一般病棟、精神療養病棟への理学療法士としての関わりは決して十分ではないと感じました。現状の理学療法士の関わりは、病棟スタッフからポジショニングや移動形態の相談を受けたり、杖の指導を行ったりすることが中心です。

 

甲田:精神科で身体的合併症を有した方への対応の現状についてはどのように思われますか。

 

北風:精神科に入院された方全員に理学療法が必要というわけではありません。しかし、特に精神療養病棟に入院されている患者さんは病院外での受け皿が極端に少なく、長期的な入院生活を余儀なくされるケースが非常に多いです。さらには、向精神薬の副作用もあり身体介助が必要になる方もたくさんいます。そのため、看護師さんをはじめとする精神科病棟のスタッフは、入院の直接的な原因となっている精神疾患による症状だけでなく、身体介助に悩まされることが多いようです。

私が、数年前に院内で行ったアンケート調査の結果でも、精神科ケアで最も困ることのひとつに『身体介助』に関する項目があがっていました。この点については身体面のプロである理学療法士として、当院だけでなく広島県全体そして理学療法業界全体としてきちんと取り組むべき課題だと認識しています。

 

甲田:精神科病棟での理学療法士の現状について大変よくわかりました。他県では、精神一般病棟入院患者の身体合併症に対して積極的に理学療法が処方されるケースもあるようです。まずは理学療法士が身体合併症に対し何ができるか、また理学療法士が病棟にいることで他職種にどのようなメリットがあるか等を丁寧に分析し、きちんと発信していく必要がありますね。これは、最近、診療報酬上で見直された認知症のリハビリテーションについても同様でしょう。平成30年度の診療報酬改定で認知症患者リハビリテーション料について算定日数の上限が緩和され理学療法士が関わりやすい環境となったと思います。北風先生の職場での認知症患者リハビリテーション料の現状を教えていただけますか。

 

北風:認知症患者リハビリテーション料は、認知症治療病棟に入院されている患者さんに対し理学療法士、作業療法士または言語聴覚士が個別に20分以上のリハビリテーションを行った場合に算定できます。アプローチの内容として、作業療法、運動療法、学習訓練療法などを組み合わせて行うようにされており、当院では理学療法士を中心に二重課題 (ながら運動)を行うことが多いのが実情です。平成30年度の診療報酬改定後に、当院でも算定を始めたばかりですのでまだまだ勉強が必要です。

 

甲田:認知症治療病棟で勤務する理学療法士は今後増える可能性があると思います。そういった方々に向けたアドバイスはありますか。

 

北風:認知症リハビリテーション料を算定することはもちろん大事ですが、認知症治療病棟に理学療法士が「いること」がとても大事だと感じました。療養環境や患者さんの普段の生活の中で理学療法士の視点から気づけることがたくさんあります。その気づきに対し、他職種の業務や考え方をきちんと把握・尊重した上で、患者さんや他職種にとってメリットのある提案ができることが大事だと感じています。

 

甲田:おっしゃる通りですね。まだまだ課題がありますが、今後発展する余地が多い分野ですので精神・心理理学療法部門としても頑張らないといけないと再認識しました。

今日はお忙しいところありがとうございました。

(この記事はHPTA NEWS One Step257 に掲載されました)

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