SPECIAL INTERVIEWー集中治療領域で勤務する理学療法士ー

SPECIAL INTERVIEWー集中治療領域で勤務する理学療法士ー

集中治療領域で勤務する理学療法士

広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門
對東 俊介

集中治療領域の理学療法はベッドサイドへの訪問リハビリテーション

広島大学病院高度救命救急センター・集中治療部は、救命救急センター20床、集中治療室(Intensive Care Unit: ICU)6床の計26床と、高度治療室 (High Care Unit: HCU)10床の一部を管理しています。これらとは別に当院には術後の患者が入室する外科系ICU(Surgical ICU: SICU)があります。リハビリテーションの体制として、集中治療病棟専従の理学療法士2名で15~20人程度の患者を担当しています。医師や看護師といつでも円滑なコミュニケーションをとれるよう、理学療法士間での情報交換を密に行っています。救命救急センターとHCUでは疾患別リハビリテーションを算定し、ICUとSICUでは主に平成30年度診療報酬改定で新設された「早期離床・リハビリテーション加算」を算定しています。

ICUやSICUに入室されている患者さんの1日の生活をマネジメントする上で、疾患別リハビリテーションのように1単位(20分)で介入するよりも、10分程度で頻回に介入する方が理学療法士として貢献できることが多いときもあります。実際に20分間も運動療法が行えない患者さんが多い環境ですので、短時間でポジショニングを行いその後の時間を快適に過ごしてもらうという考えが強いです。集中治療領域のリハビリテーションとして、多くの機器が使用されている環境下で特別な理学療法を想像される方もいるかもしれませんが、私はベッドサイドへの『訪問リハビリテーション』だと考えています。理学療法士が介入して、次に介入するときは前回介入からの変化を確認する。生活期の訪問リハビリテーションはその間隔が数日もしくは1週間ですが、集中治療領域ではその間隔が非常に短いというだけです。このような関わり方をしているため、多くの理学療法士のようには単位算定を行えているわけではありません。だからこそ在院日数や人工呼吸器管理期間等、単位以外の部分で私たちの関わりの効果検証を行っていく必要があると認識しています。

生活者として診る

集中治療領域において、医師による治療や看護師によるケアと違い、理学療法は患者の生存率に影響しないことがわかっています。その中で理学療法士ができることは『患者さんの生活を良くすること』だと考えています。単純な座位練習を好まない方はいても、トイレに行きたくない方は少ないでしょう。目的のない動作練習を進めるのではなく、ポータブルトイレに行くという具体的な目標を持って進めることで患者さんや他職種の理解を得られることもあります。集中治療領域で働き始めたばかりの頃は、“ここで理学療法士にできること”に迷うこともありましたが、現在は、生活者として診るという視点は理学療法士の強みだと感じています。

集中治療領域で働く上で大事にしていること

集中治療領域で働く理学療法士に必要な能力は、日常生活動作(Activities of Daily Living: ADL)面で他職種に提案できることだと思います。医師に対して、積極的に現状のADLを伝えることで、安静度拡大が円滑に進むこともあります。

また、他職種が使う専門用語を理解したり、他職種の仕事の流れを把握したりすることは大事にしていることのひとつです。広島大学病院では、集中治療領域に配属される研修生に対して研修の一環として、看護師・薬剤師・臨床工学技士・診療放射線技師・臨床検査技師・歯科衛生士等の様々な職種の業務の1日見学を実施しています。見学を通して、いつ休憩するのか、いつ勤務交代するか、いつが忙しいか等を把握することができました。集中治療領域において、理学療法士だけでできることは限られています。他職種の業務や考え方を把握しておくことで、人手が欲しいときには手伝いを依頼し、反対に忙しい時間帯には病棟スタッフの一人として、積極的に手を貸すようにしています。

ネットワークの構築を通した情報共有の活性化

当院を含め日本集中治療医学会専門医研修施設は全国に約300施設ありますが、その中で専従の理学療法士が配置されているのは20%でした。広島県内でも理学療法士が配置されている施設はあるようですが、集中治療領域に関わる理学療法士間の情報交換は活発ではないように思います。そのため、他施設でどのような理学療法が行われているかお互いに知らないことが多いのが現状です。また、集中治療領域における理学療法について、その効果が不明である疾患や病態も多く存在します。そのひとつの取り組みとして、日本学術振興会の科学研究費補助金を受け「敗血症患者に対する生活の質改善のための早期リハビリテーション方法の構築」というテーマで多施設共同研究を進めています。このような活動を通して、多くの施設の情報共有が活性化し、他施設での取り組みや課題等をお互いに共有できる環境を作ることで広島県全体のレベルアップに微力ながら貢献できればと思っています。

≪略歴≫

平成18年 広島大学医学部保健学科 理学療法学専攻 卒業

平成23年 広島大学大学院保健学研究科 保健学専攻 博士課程後期修了

同年    広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門入職

≪資格≫

専門理学療法士(内部障害)

(この記事はHPTA NEWS One Step257 に掲載されました)

ページトップ