INTERVIEW―介護老人保健施設からみた医療と介護の連携―

INTERVIEW―介護老人保健施設からみた医療と介護の連携―

INTERVIEW―介護老人保健施設からみた医療と介護の連携―

介護老人保健施設 葵の園・広島

實延 靖 先生

介護老人保健施設の役割と現状を教えてください

介護老人保健施設(以下、老健)は在宅復帰を目指す施設、かつ在宅生活の継続を支援する施設になります。普段老健に関わる機会の少ない方にとっては前者のイメージが強いかもしれませんが、実は後者の役割も大きいです。レスパイト機能としての短期入所もあります。

平成30年度介護報酬改定から5区分の報酬体系(表1)に再編され、より具体的なアウトカムを求められるようになっています。在宅復帰・在宅療養等指標では1から4までの配点が高くなっています。これにより当該老健が中間施設としての役割を果たしているかどうかを評価されます。それ以外は在宅生活を支援できるサービス提供ができているかを評価されるものです。

<表1>老健における在宅復帰・在宅療養支援機能に対する算定要件等

老健との関わりを教えてください。また、その経験の中でどのようなことを工夫されましたか?

10年以上前になりますが、以前勤務していた法人が老健を運営するようになり、その際に老健の立ち上げに関わりました。そこでは、同じフロアに医療と介護のリハビリ室があったため医療と介護を行き来される方の状態を診ることができました。立ち上げから数年は老健、その後は病院で勤務となりましたが、どちらも管理職としての仕事でしたので、診療報酬や介護報酬の改定があれば両方を俯瞰してみる立場にありました。この経験の中で、『介護現場ではいかに情報が少ないか』を実感しました。また、老健入所後の利用者さんの変化をきちんと追えていない場面に度々遭遇し、情報連携を促進する必要性に駆られました。中でも、医療から介護へのバトンタッチ時に療法士が引き継ぐべき情報としては、Berg Balance Scale(BBS)や10m歩行時間などの『基本的な運動機能検査』だと感じます。そのような情報が引き継がれることで、老健の利用開始となってからの効果を検証しやすくなりました。

同法人内で学んだ経験をもとに、地域連携パスの意見交換会等でも療法士の視点を踏まえた情報連携の重要性を発信してきました。

新たな職場で情報連携システムを構築するのは大変だったのでは?

現在の職場である葵の園・広島は、入所110床、通所定員40名に対し、セラピストは6名です。まだできて4年目の新しい施設なので、できるところから少しずつ手をつけています。

今、私が勤務する施設には、虚弱高齢者や脳卒中後遺症の方が比較的に多いため、理学療法診療ガイドラインを参考に、推奨グレードの高い評価(BBS、Timed Up & Go Test (TUG)、握力、Barthel Index (BI)、10m歩行時間、CS-30)を基本に評価しています。入所時と計画書更新時、短期集中リハビリテーション実施が終わる時、退所時にデータを示すことで、改善点や目標達成ができたことを可視化するよう努めています。また、蓄積したデータを利用者さんに示すだけでなく、在宅の主治医へ伝達するシステム作りも進めています。今後の目標としては、そのような情報連携のやり方を他の施設とも共有していきたいと思っています。そのようなシステム作りには、日本理学療法士協会が進めている管理者ネットワークも活用していく必要があると思います。

 

*広島県理学療法士会の管理者の取り組み

http://hpta.or.jp/modules/user_top/index.php?content_id=6

医療と介護の連携にはどのような課題がありますか?

介護側から医療側に突っ込んで情報収集ができていないことは課題のひとつだと思っています。介護側からは病院は敷居が高いことはよく耳にします。どんな情報を医療側が持っているのか知らない人もいらっしゃいます。書面で来た情報に対して補足情報が欲しい場合に紹介先に電話をかける勇気も大切でしょう。

医療側に求める欲しい情報としては、『入院中の目標』と、繰り返しになりますが『運動機能検査等の客観的データ』です。

入院前の情報は、ケアマネジャーに聞けばわかります。報酬改定によって、退院前にケアマネジャーが来院すると点数が算定できるようになったように、制度上は「医療と介護はきちんと連携しなさい」という方向になっています。今までは点数がなかったため、連携ができないのは制度に要因があると言えていましたが、制度はきちんと変わりました。今回の報酬改定をきっかけとして、医療と介護の連携がスムーズにいくよう理学療法士から医師や医療ソーシャルワーカーに進言することも大事でしょう。

老健で勤務する魅力や求められる能力は?

医療保険ではできない集団指導ができるので、利用者の社会参加を促進できます。1対1のやり方では社会参加を促進しにくいですよね。地域に帰っても家から出ずに悪くなって再入院する。そういう方はいらっしゃいませんか?そういったことを防ぐために制度を使って介入することができます。

より生活に近い場で仕事ができることは大きな魅力のひとつだと思います。住民運営の通いの場にも専門職として積極的に関わっていく意欲と行動力(上司や多職種へのプレゼンテーション能力)も大切だと思います。老健で勤務していると、その特性上、医療と在宅の狭間でバトンの受け渡しをできます。サッカーで言えばMFといったところでしょうか。攻撃的ではないですが、時にはサイドを駆け上がって得点を決めることもできます。そのためには、多職種連携が大切になります。

自分がいない中でも能力を使ってもらえるようマネジメント力、計画立案能力、計画実行能力が病院以上に求められます。集団的な関わり、個別的な関わりを上手に使って在宅復帰してもらう、在宅生活を維持していただく。その意識をしっかり持っておくことが大切だと思います。

(この記事はHPTA NEWS One Step256 に掲載されました)

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